天使の瞳
「分かった。多分この人、有名やった」
「え、誰?」
「ほら、うちらが中二の頃、一つ上でめっちゃ美人がいるって皆で騒いでたやん」
「おったっけ、そんな奴」
「おったやん。黒髪のめっちゃ綺麗な髪した人。みんな、あそこまで黒髪が似合う人なんかおらんって言ってたやん。色白で超美人」
「あー…そう言えばおったかも。で、そいつが何で拓斗と関係があって音羽ちゃんなん?」
晃くんがアルバムから先輩二人に目を向けた。
「そう、そこやねんなぁ…」
女の先輩がフーっと息を吐きだした後、タクを見た。
「拓斗くん、この子振ったやろ」
「は?」
思わず先輩が言った言葉にあたしは目を見開きタクを見た。
そんなタクも何が何だか分かんない様に呟く。
「え、拓斗…あんた告られてたん!?」
「分からん」
千穂が驚いた声を出す。
だけど、ホントに知らないかの様にタクは顔を顰めて髪を掻き乱した。
「それが分からんのやったらお前、絶対しらんやろな」
カズ先輩が深く椅子に背をつけてそう言った。
「え、何がなん?」
タクの声が少し強張った気がする。
分からない自分にイラついてるんだろうか。