天使の瞳
とりあえず慌てて携帯を掴んだ。
時刻は8時。
窓からはガンガンに照りつけている太陽がカーテンの隙間から覗かしている。
携帯を手にしたあたしはすぐに着信音を鳴らした。
「はーい、音羽?」
「千穂っ、」
「おはよー、どーしたん?」
「手の血が止まらんねん!!」
あたしは勢いよく発した。
「え?手の血?」
「そう、あの時に切ったやつ」
「切ったやつってもう3日も経つやん」
「そうやねんけど…」
「それに音羽病院行ったんやろ?次の日、拓斗に聞いたで」
「うん、そう。でも、止まらんねん!!」
「え…止まらんて…どー言う事?縫ってんねんろ?」
「そうやねんけど…」
携帯を首に挟む様にして、あたしは左手の平を何度もティッシュで拭きとる。
だけど、拭いても拭いても少しづつ落ちてくる血に眩暈がしそうだった。
「なぁ音羽、病院行ったほうがいいんじゃない?拓斗呼ぼうか?」
「ううん…いい」
「んじゃあ、あたし行くわ。別に何も予定ないし」
「うん…ごめん」
電話を切った後、不愉快に滲んでくる血に顔を顰め、その手にタオルを巻き付けた。
布団のシーツも剥がして、とりあえず病院に行く為にあたしは服に袖を通した。