天使の瞳

とりあえず慌てて携帯を掴んだ。


時刻は8時。


窓からはガンガンに照りつけている太陽がカーテンの隙間から覗かしている。

携帯を手にしたあたしはすぐに着信音を鳴らした。


「はーい、音羽?」

「千穂っ、」

「おはよー、どーしたん?」

「手の血が止まらんねん!!」


あたしは勢いよく発した。


「え?手の血?」

「そう、あの時に切ったやつ」

「切ったやつってもう3日も経つやん」

「そうやねんけど…」

「それに音羽病院行ったんやろ?次の日、拓斗に聞いたで」

「うん、そう。でも、止まらんねん!!」

「え…止まらんて…どー言う事?縫ってんねんろ?」

「そうやねんけど…」


携帯を首に挟む様にして、あたしは左手の平を何度もティッシュで拭きとる。

だけど、拭いても拭いても少しづつ落ちてくる血に眩暈がしそうだった。


「なぁ音羽、病院行ったほうがいいんじゃない?拓斗呼ぼうか?」

「ううん…いい」

「んじゃあ、あたし行くわ。別に何も予定ないし」

「うん…ごめん」


電話を切った後、不愉快に滲んでくる血に顔を顰め、その手にタオルを巻き付けた。

布団のシーツも剥がして、とりあえず病院に行く為にあたしは服に袖を通した。
< 56 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop