天使の瞳
それから1時間を過ぎてからだった。
家までわざわざ来てくれた千穂とともに、あたしはタクが連れて行ってくれた病院まで足を運んだ。
「なぁ音羽、大丈夫なん?…って大丈夫そうには見えんけど」
「……」
千穂は心配そうな声であたしの手の平を見る。
「なぁ、拓斗か晃でも呼ぶ?」
「呼んでどーするん?」
「まぁ、それもそうやけどさ…。けど縫ってんのに血出る事あんのかな?」
「分からん…」
今はそれしか言えなかった。
痛さもないし謎だらけ。
午前中の病院は人で溢れかえっていて、受付を済ませた後、あたしと千穂は待合室のソファーに背をつけた。
混雑する中、呼ばれていく名前に耳を傾けて自分の名前が呼ばれるまでひたすら待つ。
どれくらいの時間待ったのかも分からない時だった。
名前が呼ばれ退屈している千穂に手を振ったあたしは診察室へと入る。
「どうしました?」
そう明るく声を掛けて来たのは女医さん。
とりあえず椅子に座りながら手の事を全て話した。