天使の瞳

「弱い?」

「うん、皮膚と皮膚がくっついてないってさ。まぁそんな感じっぽい」

「へー…そうなんや。けど、大丈夫なんやろ?」

「…うん」

「ほな良かったやん」

「…うん」


シックリしない頷きをしたあたしに、隣に来た看護師さんは会計に出すファイルを渡してきた。

お大事に。ってそう言われた言葉も何だかよく思えなかった。


お大事にって言われても、この怪我した理由も何も分からんのに。


会計を済ませた後、お腹が空いたと言った千穂に合わせ、あたしはファミレスへと向かった。


「なぁ、音羽?」


四人掛けのソファー席へ腰を下ろすと同時に千穂はあたしを呼ぶ。


「うん?」

「音羽、肩痛いん?」

「え?」

「だって会った時からずっと右肩触ってるやん」


言われて分かった。

そんな事、全然自分では意識してなかった。

千穂に言われるくらい触ってたなんて自分では分かんなかった。


「うーん…なんかずっと痛いねん」

「音羽って肩コリあったっけ?」

「ないよ。こんなずっと痛いの初めて」

「そーやんな。何で痛いん?何したん?」

「分からん…」

「もー音羽最近、分からんばっかやん」

「そうかなぁ…」

「そうやって…」


千穂は少し顔を顰めて小さく息を吐き捨てた。


< 59 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop