天使の瞳

震える身体からさっきよりもましてくる肩の痛み。

投げてしまった携帯がどうしても取りに行けなくて、あたしは頭を抱えた。

激しい肩の痛み。痛いと言うか重い。


まるで誰かが乗っかっているんじゃないかと言う重み。


だから思わず下げていた頭をガバっと上げる。

部屋の中を見渡すあたしの心臓は自棄にバクバクと早打ちする。


一人で居るのが怖くてたまらなかった。

もう一度携帯を確認する事もなく、気の所為だなんて絶対に思えなかった。


急いで電話代の引き出しを開けた。

そこから電話帳を探して、お母さんが書いた字で埋め尽くされている電話番号の中から一つだけ雑な字が目についた。


 オレ…080-……


歩夢が書いたであろう汚い字の番号をあたしは素早くプッシュしていく。


「あ?何?」


5回くらいコールした後、歩夢のダルそうな声が電話越しから聞こえた。


「歩夢!?あんたいつ帰んの?」

「はぁ!?お前かよ!!つか何で家デンやねん」

「だから何時に帰るん?」

「つか今日帰らんって」

「はぁ!?何で?」

「何でって遊ぶから」


裏からはキャッキャッ男女の騒ぐ声が聞こえる。


「つか、もう切るぞ」


続けて言って来た歩夢の声に、「待って――…」そう言った途端、ツーツーと電話が切れた。





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