天使の瞳
バクバクと物凄い心拍数。
今、後ろを振り返って誰かが居たらどうしょうとか、そんなありもしない事を考えていると額に汗が滲んできた。
フーッと息を吐くものの、未だに持っている受話器の手が小刻みに震えてる。
と、同時にガタン…っと音が響いたのであたしに身体は一気に飛び上がった。
「あー…音羽いたの。ってかどーしたの?」
リビングに入って来たあたしを見るなりお母さんは不思議そうにあたしを見つめる。
「いや…何でも…」
そう言って受話器を置いて額の汗を拭きとった。
「誰に電話してたの?家からするなんて珍しいやん」
「あー…携帯の調子おかしくて」
「ふーん…」
「歩夢、帰らへんねんて」
「あぁ、そう」
スーパーの袋を下げていたお母さんはキッチンへと向かい、冷蔵庫へ閉まっていく。
もう一度ソファーに腰を下ろしたあたしは、さっき投げ捨てた携帯をボンヤリ見つめた。
「あ、それより音羽?」
「うん?」
「タクくんにお金返したの?」
「え、まだ」
「もー早く返しなさいよ」
「うん」
そう言われても携帯を拾う気にはなれなかった。
もちろんタクの番号は携帯でしか分かんない。だけど、その携帯が見る事も出来ないからどうする訳にもいかない。