天使の瞳

嫌でも夜は来て嫌でも寝る時間はくる。

夜中の0時を過ぎようとする頃、お母さんは「寝るよ」そう言って部屋に向かった。


お母さん…寝ようよ。なんて言葉もなんか言えなくて部屋に向かった。

そして携帯の音が鳴らない様にと目を瞑ったまま電源を切った。


切れたのを確認するとあたしはタオルケットに包まる。

バクバクと自棄に聞こえてくる心臓の音とともに、早く朝になってほしいと願ってた。



記憶が一瞬、途切れてた。

寝てたんだと実感するとともに額に汗ばんだ汗を手で拭う――…



と、同時に目の先に見える人物に身体が硬直した。


だ、誰――…


長い長い髪をした誰かが居る。

透明感がある透き通った人物があたしの目の先に居る。


声なんて出なかった。ただ、硬直した身体。

タオルケットを頭から被ろうとする動作さえ電気を点けようとする動作さえ出来なかった。


見つめるその女は、あの時に見た女の人。そしてゆっくりと口角を上げて微笑んだ。

ドクン…と心臓が波打った。額から流れてくる汗が異様に激しく息をするのも忘れそうだった。



あんたがメール送ったん?

あんたがあたしの手を傷つけたん?

あんたがあの時、あたしは突き飛ばしたん?


誰?

あたしが何したって言うんよ――…


次々に出て行く言葉。ゴクリと唾を飲み込んだ。そしてすぐにその女は微笑みながらスッとドアをすり抜けて消えた。







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