天使の瞳
「どーしたん、タク?」
ガンガンとする頭を擦りながらあたしは小さく呟く。
「どうしたんちゃうやろ、アホ!!一昨日から何回も何回も電話しとんのに繋がらんし面倒くさいから来たわ」
「あー…なんかあった?」
「はぁ!?お前一回も電源入れてへんの?俺、メール入れたんやけど」
「あぁ…そうなんや。で、どーしたん?」
「どーしたん?って、手や、手」
「手?」
「そう、千穂から病院行ったって聞いたからお前に電話したんや」
「あー…うん」
「つか、どうした?」
「別に…」
「もしかしてお前、ずーとその恰好でおったん?」
「うん…」
タクはあたしを上から下まで目線を送った。
ボサボサした髪を束ねる事なく化粧する事もなく、Tシャツに短パン姿。
こんな恰好で外に行けるわけがないって恰好。
普通じゃこんな恰好、異性に見られると嫌なのにタクじゃ何も思わないって事がまた不思議だ。
「まぁ、ええわ。なぁ音羽ついでにどっか行かへん?」
「どっかって何処?」
「まぁ、適当に」
「嫌や、化粧してないし」
「ええやんそのままで。つかなお前はせんほうがいいねん。したらキツクなるから」
「どー言う意味なんっ?」
「まぁ、とにかく着替えろよ」
まだ行くとも言ってないのにタクはそう言って家の中に足を踏み入れた。