天使の瞳
「拓斗、くん?」
そうぎこちなく聞こえた声にあたしとタクは立ち止まってゆっくりと視線を送った。
そこに居たのは同い年なんだろうか、年下なんだろうか…それくらいの女の人があたし達を見てた。
「え?」
タクが少し首を傾げる。
「あー…この前みんなでカラオケしたやん?そんときに居たんやけど、覚えてない?」
「あー…分かった分かった」
「楽しかったね、この前」
何だ、この会話。
そうタクの隣であたしは秘かに思っていた。
「まぁ…」
「えっと、もしかして拓斗くんの彼女?」
え?
振り向かれた視線で思わず心の中で呟いてしまった。
あたしがタクの彼女!?いやいや、ありえへんから。
「まぁー…そんな感じ」
そう言ったタクを思わず眉間に皺を寄せて見上げてしまった。
「なんとなく居るかなって思ってたけど、ホントに居たんや。…綺麗な人やね」
「外見だけな」
サラっと言ったタクの背中をまたあたしはバンっと叩いた。
睨むあたし。
顔を顰めるタク。
薄ら笑う女の子。
なんとも言えない組み合わせ。そもそもあたしはタクの彼女でもなんでもない。