天使の瞳
タクはレジで注文したアイスコーヒーとアイスティーを持って、開いている席に座る。
「お前まだ拗ねてんのか?」
そう言ったタクは面白げに笑う。
「別に…」
「また出たっ、音羽の“別に”発言」
「そもそもタクって、あたしをイジメル為に誘ったん?」
アイスティーにガムシロを入れてクルクルとストローを回す。
「違うわ。お前が…音羽が心配になったからや」
「心配って…子供じゃないんやし」
「アホか。電源2~3日も繋がらんかったら心配するやろ!どーしたんやろってずっと思っとった俺の身にもなれ!」
「…ごめん」
「で、何があってん?」
「…別に」
「ほら、また別に…。まぁ、ええけどや」
タクはフーッと息を吐いてアイスコーヒーを飲みほした。
ちょっと空気が悪くなってしまった。居心地がすごく悪くなってしまった。
でも、タクの性格なんだろうか。出た頃には何もなかった様に普通に戻ってて、いつもと変わらない感じだった。
そのお陰で、繁華街を歩き、色んなお店に足を踏み入れ、気づけばもう、日が落ちてくる頃になってた。
帰り際、交差点の信号で足を止めた。
勢いよく走っていく車を目で追いながら、青に変わった信号を確認してあたしは足を踏み出した。
「おいっ、!!」
叫んだタクの声にビクンとした。引っ張られている手首が自棄に痛かった。
必然的に止めた足。あたしは直ぐにタクを見上げた。