天使の瞳
「いやゃゃゃ――…!!」
真っ黒になった部屋にあたしの悲鳴が響く。
降りしきる雨の音が異様に強くて、あたしはその場にしゃがみ込んだ。それと同時にまた始まった耳の違和感。
誰かが笑ってる。誰かが笑ってる。
クスクスと笑うような声が耳にへばりついている。その音を塞ぐように、あたしは凄く震えている手で両耳を押さえた。
だけど、そんな事をしても何も変わんなくて、だんだんと大きくなってくる笑い声に寒気が走る。
いてもたっても居られないあたしは直ぐに電気のスイッチがある方向に向かった。
パチンパチンと音が鳴るだけで家の明かりは点いてはくれない。何度も何度もする一方に大きくなっている様な近づいてくるような笑い声。
その瞬間、足に絡まった椅子がガタン…と音を立ててこけた。
見たくない影をみてしまった。…影じゃなくて誰かが居る。
カーテンの前に誰かが立っている。
「お願い…来ないでよ。…来ないでってば!!」
少しづつ近づいて来る女の人。口角を上げて微笑んでいるその霊に鳥肌が立つ。
少しづつ足を後ろに進ませるあたしに対して女は近づいて来る。テーブルに手をついたあたしは、丁度そこにあったハサミを握りしめた。