天使の瞳
「おいっ、音羽!?」
グラン…とあたしの身体が揺れた。
その所為で地面に倒れ込んだあたしの目の前にタクが映る。
「おい、どーしてん、音羽!!」
「……」
「しっかりしろって!何があってん、音羽!!」
その後の意識なんて何もなかった。
ただ気づいた頃には病院のベッドに居た。
窓から差し込んで来る明かりで朝だと実感する。
「音羽!?」
誰かがベッドに手を勢いよくついた所為で、少し左身体が沈んだ。
ゆっくりと目を向けると悲しそうな顔をする千穂が目に入った。
「…千穂?」
「音羽、大丈夫!?」
「ごめん、あたし…どうしてたか…」
「記憶ないん?」
「……」
「タクが泣きそうな声で電話してきた。音羽の意識がないって…。音羽、雨の中、倒れてたんやで」
「……」
「手からは血が出てたみたいやし」
そう言われて思い出した。
少し痛みが走った手。ゆっくり右手を上げると白いガーゼが張りつけてある。そしてその腕には透明のチューブが張りつけてあった。
ポタポタと落ちる液体。
あたし…生きてるんや。