天使の瞳
「なぁ、音羽も食べーや」
千穂はお皿に入ったお肉を差し出す。
軽く首を振るあたしに、「何で?食べな倒れるで」そう言って首を少し傾げた。
「どーしたん?音羽ちゃん、食べへんの?」
晃くんがそう言った後にタクがあたしの目の前に立つ。
「どーした?音羽」
「いや…なんかお腹空いてないって言うか…」
匂いか分かんない。だんだんと気持ち悪くなってくる胃を擦りながら、あたしは「ごめん、気持ち悪い…」そう言って席を立った。
近くにある水道で口の中を濯ぐ。
何度も何度も濯いで少し気分を落ち着かせる。
首に巻いていたタオルでそっと口を拭き、あたしはもう一度戻った。
「どーしたん、音羽?大丈夫?…気持ち悪いって、妊娠でもしてんの?」
千穂の笑い声とともに、「え?」と、呟く晃くんとタクの声。
思わず目が合った2人にあたしは素早く首を振った。
「え、マジで音羽ちゃん妊娠なん?」
驚きつつ冷静な晃くん。
「だから違う、違う。違うから。千穂、変な事言わんとって」
あたしは慌てて否定する。
「だって、なんか症状がそっくりやん」
空気を読まずにサラっと言う千穂。
って言うかあたし、誰ともしてないから。
…って、そこまで言えなかった。