ましゅまろハート
「ちょっとタク、

 聞いてんの?」


感情的に怒鳴る

母親の声を背にしながら、

俺はゆっくりと

部屋のドアを閉めた。


いつも以上にずしりと重く感じる

バッグを下ろす。


そして何もかも

全てを投げ出すように、

俺は思いっきり

ベッドへダイブした。


静かに目を閉じる。


すると入学式に感じた

あの甘い香りが

鼻の奥で感じ始めた、

ような気がした。


瞼の裏には

教科書販売の時の彼女の姿。


俺はしばらくその姿を眺めた。



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