地球の三角、宇宙の四角。
気が付いたら電気を点けたまま寝てしまっていたのだろうか、また胎児のようなポーズで夕日が目に入り、同じように発狂してしまっている。そして、キツネ目の女に取り押さえられる。

昨日と同じだ。

昨日と同じで、行動とは別に冷めた私が私を観察している。

昨日と違うのはこれが二日目だと感じていること。

同じ繰り返しだと疑っている自分がいるのも昨日とは違う。昨日はここで、男の人が来るのだ。

ドアを見ると男の人が入って来た。

「ずいぶん長いこと寝ていましたね。気分は、どうですか」

低い声。ゆっくりとしたしゃべり方の人は心配そうな顔をしながら椅子に腰掛けた。同じだ。


「幸村さんは!」声を荒げて言った。言ってしまった。

昨日と同じ事を先生が言っているのに、それに疑問を感じつつ私は同じ事を言ってしまっている。なんなんだろうか?

「ゆきむら・さん?」

男の人は、キツネ目の女のほうを見る。

女は首をかしげた。これも昨日と同じ。

「エレベーターに黒い影のような物があって、……」

白衣の男は、眉根を寄せて難しい顔をした。これも同じ。

「黒い影? どこまで、覚えていますか?」

私は昨日と同じように順を追って説明する。そのたびに頭がズキズキと痛むが、ようやく私は、私を徐々にではあるが制御できるようになった。

だけど、ここはどこで、誰が連れてきたのかを尋ねてしまっている。ハンドルもブレーキもきかない車に乗っているような感覚がした。

すると、会社内に倒れていたところを警備会社の人が見つけて、救急車で救急病院に、ということらしい同じやりとりをしてる。

「いままで、貧血で倒れたりだとか、そのようなことはありましたか?」

はい、小学校の時に合唱コンクールの練習で、と昨日は答えた。

ここでようやくブレーキが効いた。

「ありません」

昨日とは、違うことを答えることが出来た。

「……そうですか」

「すいません、昨日も同じ事を聞きませんでしたか?」

「昨日?」ノックの音がした。

さおりんと課長が、入ってくるはずだ。
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