奇跡事【完結】
薄暗くなってきたからどこかで野宿しようと、俺は寝る場所を探していた。
木々の陰にそいつはいた。
顔を帽子で隠し、無防備に寝転んでいる。
……寝ているのか?
規則的に動く腹を見て、そう考えた俺はゆっくりとそいつに近付いた。
そっと帽子に手を伸ばす。
帽子まで後数センチのところで急に起き上がったそいつは俺の背後に回る。
それから首に何かを押し当てた。
背後に回るまであっという間だった。
「……誰だ」
「……」
首元に触れた冷たい感触。きっとナイフか何かだろう。
低い声でそいつは再度尋ねる。
「……名前は」
「サーティ、ス」
「サーティス?初めて聞く名前だ」
「……お前こそ、何でそこで寝ていた」
「許可なんていらないだろう。俺の自由だ」
「確かにそうだな。ただ顔を見たかっただけだ。危害を加えるつもりはない」
「……」
「本当だ」
「……まあいい。何か変な動きしたら遠慮はしない」
「好きにすればいい」
やっと解放された俺は小さく息をつくと、ゆっくりと振り返りそいつの顔を見た。
思った以上にそいつは端正な顔をしていた。
それに、綺麗なガラス玉みたいな瞳。
キラキラと光る金色の髪の毛。