こわれもの
「アスカ、ちょっとお待ち」
ノブはアスカに、昨日届いた手紙を渡した。
「千尋からだよ」
差出人の上原千尋(うえはら·ちひろ)はアスカの母であり、ノブの娘である。
ノブは神妙な顔で、
「あの子、この前の電話でも、アスカから連絡がないって心配してたよ。
やっぱりまだ、千尋と一緒に住む決心はつかないかい?」
「私の気持ちは変わらない。
私はあの人を、新しいお父さんだなんて思えないし。
……それとも、おばあちゃんは、私と住むの嫌?」
「そんなわけ、ないじゃないの。
そういう問題じゃなくてね……」
血を分けた唯一の親子なのだから、離れ離れに住まず、アスカと千尋は同じ家に住むべきだとノブは思っていた。
だが、アスカにはそんなつもりはない。
あらかじめ用意しておいたセリフをノブに吐いた。
「おばあちゃんの負担になるなら、私はお母さんの元に行くよ。
そうしたとしても、高校卒業したら、どっちみち一人暮らしするけど」
「そんなの、ダメだよ!」
「…………」
「……ごめん、無理を言ったね。
アスカもまだ、気持ちの整理ができないよね」
ノブは説得を諦め、学校に向かうアスカの背中を見送った。