こわれもの
“ヒロトさんなら、私の話、聞いてくれるかな……?”
ヒロトのメールに、アスカはすがりたくなったが、一瞬でそれを打ち消した。
“ううん、そんなのダメだよっ。
私、始めから甘えすぎ。
こんな重い相談したら、ヒロトさんも迷惑するに決まってるよ”
親友のキョウにすら、家族のことはあまり話していない。
重たい話は、自分の中で抑えておくに限る。
これが、アスカの心情だ。
“せっかく楽しい関係でいられてるのに、相手にまで、こっちの暗い気分を伝染させたくないし……”
キョウだけでなく、ヒロトに対してもそうしたいと思っている。
アスカが一人モンモンと考えていると、
「ニヤニヤしたり暗くなったり、朝から忙しいヤツだなー」
横から、無視したいほど憎たらしい男子の声がした。
アスカのクラスメイト·垣崎マツリ(かきさき·まつり)である。
「うるさい!
アンタ、こっから乗る気?
違う車両行ってよ」
「なんでお前ごときに命令されなきゃならねーの?
つーか、ニンニクくさくね?」
「えっ……!!」
アスカは両手で口を押さえ、顔を赤らめる。
昨夜焼肉を食べたせいだ……!
「普通、学校ある日にニンニク食うかよ」
マツリはせせら笑い、アスカを見下す。
何も言い返せず、アスカは恥ずかしい気持ちで彼をにらんだ。
アスカにとって、マツリは天敵とも言える存在で、何かあるたびに、彼はこうしてわざと腹の立つことを言ってアスカに絡む、困った男子生徒なのだ。
「ほっといてよ。
頭ン中小学生で止まってるアンタに言われたくない」
普段平和主義のアスカも、マツリにだけは負けじと言い返し、強気な態度を崩さなかった。