純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 いつの間に私の診察室に入って来たのかは分からないけれど、精神科の綾部先生がそこにいた。……中指で眼鏡をスチャッと直しながら。

 綾部先生は若くてカッコイイといえばカッコイイのだけれど……たまに表に出す変態の部分が致命的な傷。ホント、もったいないわ。


「そ·れ·で……なんの用かしら? 綾部センセー?」

「患者の様子を診に来るのは、医者として当然のことだろ?」

「……本当に診に来ただけならいいのだけれどね」

「何か言ったか?」

「いーえ? とりあえず邪魔なので出て行ってくだっ……さい!」

「ちょっ、そんなに押すなよ!待てって!せめて患者の絶望にまみれた顔を見てか…──」


 言い終わる前に私は綾部先生を追い出した。

 ホント、毎回思うのだけれど綾部先生は変態だわ。患者の絶望にまみれた顔が見たいって、医者が言う台詞じゃないわよね~。


「綾部先生がうるさくてごめんなさいね?……ねえ。何があったのか話してくれない?」


 桐生さんは黙っていた。

 「ハルカ」と呼んでいた時とは違い、目の焦点は合っているし意識もしっかりしているようだけれど、ただただ黙っていた。
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