純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
「あなたがそう言うのなら私は何もしない。けれど、その左目がない状態で生きていくことは、とても辛くて過酷だということを覚えておきなさい。……いいわね?」

「……はい」


 私は痛みが出てこないようにと最低限の治療を施してから、再び包帯を巻いてあげた。

 何か痛みが出た時や、義眼や移植手術を考えた時は私のもとを訪れなさい。全力で力になるわ。

 そう言うと、桐生さんはうなずいて部屋を出て行った。

 けれど、私は薄々と気がついていた。桐生さんが私のもとを訪れることは、当分の間はないだろうと。少なくとも、何かしらのキッカケがあるまでは。

 ……これは、女の勘。

 ――そして、私の勘通り、桐生さんが私の目の前に姿を現すことは……なかった。


【一夜 Side.】


 それからは俺は、太陽の光から逃げるように、隠れるように、春香のことを想いながら細々と生きてきた。

 酷い目に遭ったり酷いことを言われても何も感じないのは、俺にはもう、心がないからだ。春香がいなくなってしまったあの日に、心は粉々に壊れてしまったからだ。

 あの雨の日、俺に声をかけてくれた“碧の森”のマスターに雇われ、アルバイトをしながら大学の勉強を進めていく俺の心は、間違いなく空っぽだ。
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