純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 壁に設置されている棚の上には、男女兼用のシャンプーやリンスが置かれているのだが……確か、これも少々値が張ったような気がする。

 桐生さんのことだから、何も考えずに選んでいそうだけれど……。

 その証拠に、身体を洗うボディーソープはよく泡立つ一般的なものだ。

 ……桐生さんの物を選ぶ基準が分からない。やっぱり、何も考えずに選んでいるんだろうなぁ。


 ──家族や洋佑のことを考えたら泣きそうになるので、なるべく何も考えないようにして、頭や身体を洗った。

 シャワーの温度や、肌に当たる感覚は気持ちが良いので、嬉しいことに嫌なことを忘れさせてくれる。

 ……このまま誘拐されて監禁されている現実も、洗い流してくれたら良いのに。

 何度もそう思ったけれど、現実は現実。悪夢は目覚めても覚めないのだ。


「ふぅ……」


 そろそろ出ようかな。もうちょっと浴びていてもいいのだけれど、長居していると身体の皮膚がふやけちゃう。

 シャワーの湯を止め、浴室を後にして洗面所に出る。ふとカゴの中を見ると、私が持って来ていた着替えの服の他に、身体を拭くためのバスタオルが置かれていた。

 ……桐生さん、いつの間に置いていったのだろう?まったく気が付かなかった。
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