ONLOOKER Ⅳ


ヨリコは、トイレに行くと言って外した10分足らずの間に、部室へ戻っていたのだ。
それは不運にも、ちょうどユカリが部室を出た直後のことだった。
シュンと共に階段へ消えた、ユカリの後ろ姿。
虫の息で「にしでら」と恨めしそうに喘ぐ、血塗れの不良教師。
救急車、と息も絶え絶えに言う竹田を見て、ヨリコは、そばに転がっていた花瓶を拾い上げた。

「一瞬でわかったの、何があったか。びっくりするでしょ……あたしに、救急車を呼べ、って言ったのよ」

薄く笑って言う彼女が、さっきまで気絶しそうな顔でぼろぼろ涙をこぼしていた少女と同じ人物だとは、信じがたかった。
あいつはね、と、嘲笑を浮かべて、言った。

「誰でもいいの。男でも女でも、子供でも、なんでもいいんだって」

ぞっとするような言葉を、顔を笑わせたまま吐く。
コウキが、後輩や同級生たちを守るように一歩前に出たシュンに向かって、言う。

「信じられますか? バイで10歳以上も年の離れた自分の生徒に手出すようなロリコンが、教師なんですよ」
「あたしもね、コウキもなの。ナオくんとおんなじ。裏口入学だって噂流されたくないだろ、って」


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