ONLOOKER Ⅳ

お祭りにはご用心



***


「おい、なんだこれ」

顧問としてなのか出演者としてなのか、珍しく生徒会と行動を共にしていた居吹が、盛大に顔を顰めて言った。
隣では椅子に座って長い脚を組んだ准乃介が、にやにやと笑みを浮かべている。

「怖すぎでしょー、夏生たち」
「先輩、やっぱ映研部に本性バレてません? 忠実すぎますよ」
「どこが、そんなわけないでしょ。誰が書いたのあの脚本」
「は……恥ずかしい…………!!」
「え、こ、紅先輩? すごくよかったですよ!」

今日は映画祭当日、悠綺高校映画研究部が全力をかけて作った作品初披露の日である。
出演のお礼にと招待されて、仕事のあった聖と恋宵を覗く六人で、関係者席で出品作品の上映を観ているのだ。

当然彼らは、ストーリーを全て知っている。
撮影中も十分、准乃介演じるシュンの迫力に本気で怯んだり、真琴の役への入り込み方に唖然としたりしていた。
だが演出や編集が加わるだけで、映像というのはこうも変わるらしい。
次に誰がどう動くかわかっているのに、紅などは息を呑んでスクリーンを見つめていた。



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