ONLOOKER Ⅳ
「その時、誰かに会った?」
「ううん……暗くなりかけてたし、7時過ぎてたから、みんなもう帰っちゃったと思ってた」
「時間、詳しく覚えてますか?」
「えっと……」
言葉に詰まったヨリコの代わりに、コウキが口を開く。
「僕、覚えてる。7時20分頃だよ」
「え?」
「ちょうどナオと二人のシーンの撮影始めるところで。そろそろ7時半になるからって、ちょっと慌ててたから」
「そうか……コウキ先輩、ずっと一階にいましたよね?」
「うん、だいたいヨリちゃんと一緒にいた。ナオの撮影見て、着替えてきた後は三人のシーンと、ナオとのシーン撮ってたよ」
役者がほぼ三人しかいないせいもあってか、主役ではないとはいえ、それぞれの出演時間もかなり長くなる。
特にコウキはナオの部活の先輩役なので、放課後のシーンが多いのだ。
夕方や、夜でなければいけないシーンも少なくない。
そして、そんなコウキが一人になったのは、部室でヨリコが悲鳴を上げた、その瞬間だった。