ONLOOKER Ⅳ



「戻って来たのは、ちょうどナオと同じタイミングだったから、15分くらい経ってからかな」
「その時は、玄関はどうでした?」
「特になにも……いつも通りだったと思うよ」

マサトが、考え込むように目を少し伏せる。
その頃の状況を思い出しているのかなんなのか、いつになく真剣な表情だ。

やがて上げた顔は、ヨリコに向いた。
ヨリコは、目元の紅くなった顔で、マサトを見返す。
泣き虫で引っ込み思案なヨリコと、頼りなく気弱なコウキ。
親友と言うわりには、ナツとは正反対の二人だ。
中学の入学式で出会ったらしく、お互いをお互いのことをどこまでもわかっているような雰囲気が、いつもある。

「ヨリコ先輩は……結構ナオのシーン見てましたね、コウキ先輩と二人で」
「あ、うん、私が出るシーンの前後も見ておきたいと思って……。見てなかったのは、着替えとメイクしに部室に行った時と、一度トイレに行った時くらい、かな」

北校舎の女子トイレは、一階の西側にある。
ナオたちが撮影していた一階東側からそこまでは、いくら広いとはいえ、たいした距離ではない。
事実、ナツやマサトも、ヨリコが外していた時間は10分もないと記憶している。



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