うさぎ と くま の物語 (完)
「ば…!やめろって…」
「クマー!」
焦ったような篠田センパイの声が聞こえた瞬間、離れた場所から聞こえてきた佐崎センパイの声。
私たち3人は一緒に振り向く。
佐崎センパイは篠田センパイに向かって、来い来い、と手を振っていた。
「あ、やべ。あいつのことは、気が向いたらどうにかしとくから。名前は今まで通りでいい」
「おっ、マジで!サンキュー、クマ太郎♪」
篠田センパイは梨乃センパイに返事をする代わりに、手を軽く上げて、佐崎センパイの方へと向かっていった。
「くくっ。おもしろっ」
「…………」
…梨乃センパイって、無敵。
憧れる…けど、ちょっぴり嫉妬しちゃうな。
「―――ねぇ、うさぎ」
「は、はい?」
「さっき、いい雰囲気だったよ?」
「ええっ!?」
梨乃センパイはニヤニヤと私を見る。
「そ、そんなこと」
「またまたーもう、付き合っちゃえばいいのに!」
「ひっ…無理ですっ!」
私は力を込めて、首を横に振る。
だって、篠田センパイは梨乃センパイのことが好きなんですからっ!