HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
「前にものすごく泣き顔がきれいな女の子を見たことがあって、ずっと忘れられないんだ」
舞は何かを問うように眉をひそめて見せた。
「いろんな女の子と付き合ったりしたけど、俺、泣かれると冷めちゃってダメなんだよね。でも、その人の涙は特別だったな。全然知らない他人のために泣いててさ。……まだわかんない?」
「全然」
――だよな。
「高橋さん、中学生のとき、お姉さんのピアノの発表会を見に来たでしょ?」
俺はそのときの様子を舞に話して聞かせた。俺の目をじっと見つめる舞の目が徐々に見開かれる。
どうしてあんなたった一瞬の出来事が今でも忘れられないのだろう。
ただそれが知りたかったんだと思う。
俺は思い切って向かい側に座る舞の眼鏡を取り上げた。
「ちょっ……と!」
「その人が涙を拭くのに眼鏡を取ったんだ」
俺の言葉で舞は金縛りにあったように動きを止め、ただその大きな目を何度かぱちくりとさせた。
「どう? 思い出した?」
信じられない、というように舞は無言で俺を穴が開くほど見つめてくる。
――うわーっ! 目が落っこちる!
俺は珍しく緊張していた。そのせいか、脳内はわざと緊張感のないことを考えようと躍起になっている。
「それが俺の『気になる人』だったりするんだけど」
今度は舞がきちんと聞いてることを確認しながら、俺は一気に言った。