HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
 願いが叶ったので眼鏡を返した。それを大慌てで掛ける姿を見ると、少しかわいそうなことをしたかな、と後悔が胸をよぎる。

「眼鏡取ったほうがかわいいけど」

 そう言うと、舞はいつものように眼鏡の奥から冷ややかな視線を投げつけてきた。

「無理しなくていいよ。そんなお世辞」

 ――本気で言ってるんだけどな。

 俺はお世辞を言って他人の機嫌を取るような面倒なことはしない。

 舞の悪いところは卑屈になって自分を過小評価するところだ。

「高橋さん、知らないの? 自分の顔」

「嫌っていうくらい知ってるつもりだけど」

「すごくかわいいよ」

「からかわないでよ」

「本当だって。目がきれいでかわいい」

「清水くんにそんなこと言われても嬉しくない」

 会話の調子がいい感じに上がってきて、もっと喋らせたい、と思った矢先にこの一言が舞の口からこぼれた。

「なんで?」

 嫌な言われ方だった。俺は無意識に身構えていた。

「誰にでもそういうこと言うんでしょ?」



 ――誰にでも……  



「……やっぱり、高橋さんも俺のこと、そういうふうに見てたんだね」



 男というのは都合の良い生き物で、自分の好きな人をどこまでも神聖視したがる傾向がある。

 世俗から離れた世界で生きているかのように思っていたが、舞だって俺の噂の一つや二つは当然耳にしているだろう。

 舞が悪いわけじゃない。それは理解しているつもりだった。



 ……それでも、俺はどこかで舞だけは違うと信じていた。


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