鈴姫
最近珀伶兄様の姿を見ない、と香蘭は思った。
憂焔が来るまではほとんど毎日顔をあわせていたのに、彼が来た日以来とんと珀伶を見ていない。
憂焔のことが気に入らないのかもしれない。
ぜひ二人には仲良くなってほしいと思っていたのに、これでは難しそうだと気を落とした。
とりあえず珀伶の居場所だけでもつきとめようと人に聞いてまわったが、誰も知らないという。
お兄様ったら、そんなに憂焔に会いたくないのかしら!
珀伶が皆に口止めして隠れていると思った香蘭は憤慨し、こうなったら意地でも見つけ出してやろうと息まいていたときだった。
「香蘭」
名を呼ばれて振り向くと、憂焔が従者と馬を引いてこちらに来ていた。
「昼間会うなんて珍しいな」
「それは憂焔が私をほったらかしにして遊びに行くからよ」
嫌味を言ってやると、憂焔はおかしそうに笑ってから謝った。
「今から馬で北の丘まで遠乗りに行こうと思うんだ。香蘭も行かないか?」
憂焔から誘われ、香蘭は喜んで馬にまたがった。
香蘭は馬に乗るのは好きだったが、珀伶が連れて行ってくれない限り馬に乗せてはもらえなかった。
「しっかり掴まってなよ、お姫様。」
耳元で囁かれて、香蘭はうっかり顔を赤くした。
それに満足そうな笑みを浮かべた憂焔は掛け声をあげて馬を走らせた。