鈴姫
あと少しで胸を貫かれるというところで、秋蛍はさっと身を躱した。
けれども憂焔の動きは止まらず、そのまま真っ直ぐに突き進み、宝焔は目を見開いて硬直した。
憂焔の剣は、宝焔を狙っていたのである。
宝焔が躱すこともできないまま、憂焔の剣は体を貫いた。
「……!!」
しかし貫いたのは、宝焔の体ではなかった。
貫く直前に宝焔と剣の間に割り込んできた人物は、長い髪を散らしながら舞でも舞うかのように地面に崩れ落ちた。
その場にいた全員が目を見開き、憂焔は剣から手を離してその人を抱き抱えた。
「紅玉……!」
「憂焔さ、ま……」
紅玉姫は血を流しながら、腕の中から憂焔を見上げた。
「あなたを、裏切って……宝焔様の妻となったこと……お許しください……」
「そんなことはいい!」
憂焔は悲痛な面持ちで紅玉の頬に触れた。
どんどん血の気が失われていく中、紅玉は悲しげに微笑んだ。
「でも……、後悔しておりません」
紅玉はそう言って、血の気のなくなった白い手を、立ち尽くしている宝焔に伸ばした。