鈴姫
宝焔は彼女の手をとることもなく、ただ黙って見下ろしている。
紅玉はそれでも、愛おしそうに宝玉を見つめた。
「宝焔様……、私は、貴方を……愛して、おりますわ……」
その言葉を最後に、紅玉の手は冷たい床へと投げ出された。
彼女の目からは涙が一筋零れている。
憂焔は唇を噛み、紅玉の目を閉じさせた。
体は暖かいのに、彼女はもう動くことはないのだ。
そっと彼女の頬に触れていると、笑い声が降ってきて憂焔は顔をあげた。
「あはははは、僕を愛しているだって?おかしなことを言う!」
「何を笑ってるんだよ。宝焔」
憂焔は笑い転げる弟を睨みつけたが、すぐにはっと息を飲んだ。
彼は笑いながら、涙を流していたのだ。
宝焔は狂ったように笑いながら、ふらふらと窓のほうに歩いて行った。
「兄上を殺して魂を解放し、あれのもとに戻す。そうすれば全部思い通りになるはずだったのに」
宝焔はふっと表情を消して、憂焔の方を振り返った。