鈴姫
憂焔と目があうと、じっとその目を見つめた後、その腕に抱きかかえられている紅玉に視線を移した。
そしてぽつりと一言、
「最後の最後に……」
そう呟いたかと思うと、彼の口はにっと弧を描き、宝焔の姿は、窓の外に消えた。
「宝焔!!」
続いて大きな水音がして、憂焔は急いで窓に駆け寄った。
窓の下には、夜の暗闇に浮かぶ池が広がっており、水面は大きく波打っている。
「……」
憂焔が息を飲んでその池を見下ろしていると、秋蛍も隣にやってきて池に視線をやり、そして正面を見た。
暗闇で何も見えないはずなのに、秋蛍は闇の先に何かが見えているようだった。
「そうか……この池は」
そう呟いた秋蛍を憂焔は訝しげに見たが、後ろから二人を呼ぶ声がして振り返った。
ハルとカオルが、紅玉姫の側にちょこんと座っている。
「紅玉姫様の弔いを。どうやらすぐに葬儀を行なえそうにはありませんので」
カオルがそう言って、憂焔は目を瞬かせながら側へ寄った。