鈴姫
「そうと決まれば今すぐに」
「そうだな。だが、どこに敵が潜んでいるかわからぬから見送りはできない」
「見送りなど、必要ありませんよ。支度だ。リン、すぐにお前の部屋へ戻れ」
「は、はい」
急に秋蛍に命じられて、香蘭は肩を跳ねさせて返事をした。
秋蛍はそんなことを気にする様子もなく自分も支度をするために部屋へ向かっていた。
「香蘭」
慌てて部屋へ戻ろうとする香蘭を、華京が呼び止めた。
そして、彼女は微笑んだ。
「また会おう」
あまりに麗しい微笑みに、香蘭は言葉を失くして立ちつくしそうになった。
しかしそれどころではない状況だとわかっているので、すぐに気を取り直し、美しい王女に頭を下げた。
「お元気で」
「ああ」
華京は微笑みを湛えたまま香蘭に背を向けた。
遠くなっていく背中を見つめながら、香蘭は彼女を改めて尊敬した。
彼女のように強い女性になりたいと、強く思った。