意地悪LOVER
佐々木が部活に入って数日が経ったけど、ひかりと玲皇が仲悪くなるどころか、むしろ二人きりにする時間が増えていってしまった。
やっぱり俺の思い通りに行くわけないよな。
だいたい都合良すぎなんだ。
「大地先輩!タオル洗っておきましたー!」
「あ、ありがと。ここに置いといて」
「はい!」
相変わらず天使のような微笑で笑う佐々木。
やっぱり玲皇はひかりが本命なのか?だからこんなに可愛い佐々木を相手にしないのか?
佐々木が何か俺に話しかけているけれど、俺はまったくその声に耳を貸すことができない。
どうしても、ひかりと玲皇の方に目をやってしまう。
二人の会話が気になってしょうがない。
「大地先輩?」
「あ、ごめん…なに?」
「最近よくボーっとしてますよね。何か悩みごとですか?」
「悩みごと…、いやそんなたいそうなもんじゃないんだけどね」
「そうなんですか。勉強とか?」
「…まぁ、そんなとこかな。まだ二年だから焦り過ぎることなないんだろうけど…」
そんなの嘘、嘘、大嘘だ。
自分の情けなさにヘドが出る。
俺はゆっくり飲み物を口にしながら、椅子に腰掛ける。
「先輩…あたし先輩のためなら何でもしますよ?」
「…佐々木って優しいよな。なのに…俺全然それに応えられなくてごめんな」
「いえ!良いんです!…実は…」
口をモゴモゴさせて何か言おうとしている佐々木。
顔は少し赤めいている。
「…どした?」
「あたし…好きな人ができたんです!」
「マジ?誰?」
佐々木に好きな人かぁ。こんなけ可愛いんだから絶対上手くいくだろ。
「それが…絶対秘密にしといてくださいよ?」
「もちろん!」
そういうとてへへといったように笑う佐々木。
良かった、また新しい恋をしてくれて。
こんな情けない俺なんかに好意を持っていたって、佐々木は傷つくだけだから。
「…玲皇君なんです…!」
「え?」
「…だから、あたしの好きな人っ…玲皇君なんですっ!!!」
その瞬間、俺の中に今まで小さくどこかに潜んでいた悪魔が確かに俺に、ニヤリと微笑んだような気がした。