しあわせおばけ
点滴を打つとラクになると言って、妻は病院通いを続けた。
でもラクになるのはほんの一時だけで、またすぐしんどくなるらしく、妻の症状は一向に良くならなかった。
ある日、義母が妻の様子を見て、こう言った。
『一度、大きな病院で診てもらいましょう』
もちろん異論はなかった。
すぐに紹介状を書いてもらい、いちばん近い総合病院に行った。
そこで下された診断…―
「何かの病気かもとは思ったけど、まさか、がんだったなんてね」
無理に明るく言ってみても、妻(仮)の声は、悲しみや悔しさを含んだ響きで俺の耳に届いた。
「うん…」
セカンドオピニオンを求めて行ったがんセンターでも、診断結果は同じだった。