しあわせおばけ

点滴を打つとラクになると言って、妻は病院通いを続けた。

でもラクになるのはほんの一時だけで、またすぐしんどくなるらしく、妻の症状は一向に良くならなかった。



ある日、義母が妻の様子を見て、こう言った。

『一度、大きな病院で診てもらいましょう』

もちろん異論はなかった。

すぐに紹介状を書いてもらい、いちばん近い総合病院に行った。

そこで下された診断…―



「何かの病気かもとは思ったけど、まさか、がんだったなんてね」

無理に明るく言ってみても、妻(仮)の声は、悲しみや悔しさを含んだ響きで俺の耳に届いた。

「うん…」



セカンドオピニオンを求めて行ったがんセンターでも、診断結果は同じだった。



< 60 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop