しあわせおばけ

そこからはもう、あっという間と言う以外に言葉が見つからない。

みるみる体が言うことを聞かなくなり、妻は梅雨の時期に入院した。



俺は仕事を休むわけにもいかず、平日は俺の親と彼女の親が交代で看病してくれた。

俺は毎日、仕事帰りに病院に行って妻の様子を見た。

その帰りに、その日明日香を預かってくれている家まで迎えに行った。

休日には明日香の手を引いて病院に行った。

その繰り返し。



明日香にとっては、小学校に入学したばかりで楽しいはずの毎日がこんなことになって、かわいそうだったと思う。

でも、どこまで理解しているのか、病院に行くときの明日香は、ママに会えるというだけでうれしそうだった。



梅雨も終わる頃、俺がいつものように仕事帰りに顔を出すと、妻は俺の手を握ってこう言った。

『私が死んだら、新しい奥さん見つけて幸せになってね』



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