午前0時、夜空の下で
「私、見たんです」

声が、震える。

妃月は何も言わない。

ただ、冷めた目を心に向けるだけ。

「あの日、……夜会があった、夜。妃月さまと、カザリナさまが……」

ぐっと熱いものが込み上げてきて、何も言えなかった。

気を利かせたのか、狼の姿はない。

森のなかはしんと静まり返り、風によって擦れる葉の音が、やけに大きく聞こえた。

微かな水音に、ビクリと肩が跳ねる。

「夜会の晩か?」

心の様子に眉をひそめる妃月。

それはそれは不機嫌そうに声を紡ぐ。

「私は一晩中お前の部屋にいた」

「……は?」

明らかな嘘に、心の口元が引き攣った。
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