午前0時、夜空の下で
「どういう、ことですか?」

恐る恐る問い掛けた心に、妃月はゆるりと目を細めた。

「認めさせなければならないと、言ったな」

いつの間にか森のざわめきが静まり、心の頬を冷たい風が柔らかく撫でてゆく。

「――すべて幻影だ。お前を追い出すために、仕掛けたのだろう」

「幻、影……?」

戸惑う心に、妃月は思考に耽るかのように目を伏せた。

漆黒の瞳が隠れ、長い睫毛が象牙色の肌に影を生む。

「あれは未だお前を認めていない。……あの日、もしかしたらこうなるのではと、どこかで予想はしていた。だが私は、それを止めようとは思わなかった。お前を失うかもしれない……それでもあれにお前の存在を認めさせない限り、私の傍にいるのは危険だと判断したからだ」

妃月の言葉は難しすぎて、心には理解が追いつかない。

妃月があれと呼ぶのは誰なのか。

――まさか、カザリナさま?

見つめる先にある妃月は目を伏せたままで、心からの問い掛けを拒絶しているように思えた。
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