午前0時、夜空の下で
はっきりと言わなくても、予想できたのだろう。

「ごめんね。まさか、こんなことになるとは思ってなくて……」

しゅんと項垂れた心に、ミスティアは無言を貫いた。

「本当に……ごめん」

冷たい夜の空気が、心を責め立てていくようで、次第に声が小さくなる。

今頃、ノーラは琅に戻る荷造りでもしているのだろうか。

「あのとき、ちゃんと話していればよかった……そうすれば屋敷に押し掛けるなり何なり、ミスティアはカルヴァローネ伯爵に会いに行ってたはずでしょう? 騙したな!って怒鳴り込むミスティアが目に浮かぶよ」

俯いたまま、声を震わせてそう零したが。

「それはちゃうやろ。やっぱ直接レインから聞くべきやと思うし。それにしても、アンタもよう言うわ」

ミスティアは、心の言葉をばっさりと否定した。

小さな桜色の唇が、蠱惑的に弧を描く。

月明かりに照らされたその姿は、本来の美しさをさらに引き立てていた。
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