午前0時、夜空の下で
「これは船に乗らないと見られない景色だからね」

ノーラがうっとりと囁き、心たちも頷く。

魔力で移動したカルヴァローネ伯爵たちは、もう琅に着いているはずだ。

早く早くと急ぐ気持ちとは裏腹に、穏やかな船旅だった。

じゃぷりじゃぷりと波を揺らし、船はゆっくりと黎から遠ざかる。

「琅と黎は、それほど離れてないから……おそらく明け方には着くんじゃない?」

疲れたらしいノーラは、大きく伸びをしながら笑った。

黎の隣国に位置する琅は、陸続きの部分から渡るには遠回りしなければならない。

そのため、時間短縮の意味を含めて船に乗ることを選択したのだ。

黎は初代魔王が魔界を平定する以前に造られた、魔石の城塞で囲まれている国である。

三重もある堅牢な城塞は、かつて突破不可能と謳われたらしい。

現在そこは入国の関所の役目を果たしており、心も初めて城塞を目にした。


< 226 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop