午前0時、夜空の下で
「うーん、私の国にあるケーキ……焼き菓子の名前なの。私が一番好きなケーキ、ミルフィーユ」

「焼き菓子……ミル、フィーユ?」

「そう。パイとカスタードクリームを重ねた焼き菓子で、千枚の葉っていう意味を持ってるの。焼き菓子の名前ってところがちょっと気になるんだけど……」

「……ミルフィーユ」

ポツリと零れ落ちた声とともに、少女の瞳が潤みだす。

「私の、なまえ」

「千枚の葉に、たくさんの意味が込められるなぁって思って。緑の葉に彩られた新緑の木のように、生き生きと輝いた人生を送ってほしい。その葉が落ちてしまうような、つらいことがあったとしても、温かい地面で休んで、栄養となって、また諦めずに新しい葉をつける……そんな生き方をしてほしい、とかね。私が目指す生き方でもあるんだよ」

ぽとぽととワンピースの上に染みを作っていた少女は、花が綻ぶかのようにふわりと笑った。

「ありがとう。……ありがとう」

何度もありがとうを繰り返す少女――否、ミルフィーユの声には、たくさんの喜び、そしてほんの少しの切なさが込められていた。
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