午前0時、夜空の下で
クロスリードは燦然と顔を輝かせ、麗しい笑みを浮かべる。

「この世で最も美しく、最も恐ろしい方ですよ。世界を害する者は情け容赦なく切り捨て、誰の手にも落ちない、染まらない、孤高の存在。せめて愚かであれば、これほど畏怖されることもなかったでしょうね。冷徹非道なあの方は、我々にとって神にも等しい」

クロスリードの言葉に頷きながらも、アルジェンは底冷えのする瞳でもって心を見据えた。

「優しさの欠片もない方ですよ。たとえ女や子供であっても、世界を害するとあれば何の躊躇いもなく殺すでしょう。あの方に仕える我々は、些細な間違いもあってはならないのです」

聞くべきではなかった、と心は思う。

これからそのような恐ろしい存在に対面しなければならないのだと考えると、自然と足取りが遅くなってしまった。

この世に聖人君子が存在するだろうか。

二人の話を聞く限り、王はすべての民にそれを求めているのではないか。

しかしどんなに遅く歩いたとしても、いつかは辿り着いてしまうのだ。

一際豪奢な扉の前で、心は唇を噛み締める。
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