午前0時、夜空の下で
キシナは琅の医師たちに加わり、ミルフィーユの治療を行っている。

城へ向かう途中、微かに手を震わせていた心の耳元で、キシナはそっと囁いた。



『……落ち着け、動揺するな。私の一族は代々医学の研究をしているんだ。医師になる者も多いし、私も黎で軍医だった。だからわかる。――ミルフィーユは大丈夫だ』

最後の一言に、ギュッと拳を握り締める。

『絶対とは言えない。大分出血していたし、楽観できる状態じゃない。それでも、お前は毅然としていろ。……あの方に相応しくなりたいのなら、堂々としていろ』

心は肺の中の空気をすべて吐き出すと、しっかりと顔を上げた。

黎は賢者たちが数多く集まり、膨大な書物を有する国だ。
< 364 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop