午前0時、夜空の下で
世界が青く色づいたのかと目を見開いたが、はたりと瞬くと視界を染めていた青が遠ざかる。

何かが心の中から飛び立った。

鳥、だ。

うっすらと青い小鳥が、真っ白な世界を優雅に舞う。

心は自分の一部を失ったかのような、ぽっかりとした空虚感を味わっていた。

『……リーヴル様……お目にかかり……様の……』

青い小鳥が舞うごとに、黒い“何か”が発する声は大きくなったり小さくなったりと揺れ動く。

心は黒い“何か”と目が合ったと思っていたが、それはどうやら青い小鳥に向けてのことだったようである。

青い小鳥が心の中から飛び立った今、心は不思議な面持ちで青い小鳥と黒い“何か”を見つめていた。

『主が……黎に……あの方……』

途切れがちだった言葉は、徐々に形を成していく。

『まだ何も知らぬ……このままでは、あの方に……』

 青い小鳥はついと心に向かって飛んでくる。

濃い青を水で薄く伸ばしたかのような、真っ白な羽に染み入る青だ。

まるで透き通った青空のようだと心が微笑むと、小鳥は楽しそうにチチチとさえずった。

『……ル様? どうなされ――まさか、我らが主はそちらにいらっしゃるのか』

 黒い“何か”が今度こそ心に目を向ける。

そして“それ”は、驚いたかのように息を呑んだ。

やはり、と小さく漏らす。

『我らが――主よ。……声が聞こえていたのですね。今までの度重なる無礼をお詫び申し上げます』
 
黒い“何か”が揺れ動く。

それは真っ白な世界を埋め尽くすかのように、じわじわと大きく広がっていく。


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