午前0時、夜空の下で
冷然とした態度で、一切の躊躇いもなく心を殺そうとした魔王。

己の名を口にしたことで、王は怒りも露わに剣を抜いた。

それが、示すことは。

「未だかつて、陛下が自ら傍に置いた者も……陛下に自ら剣を抜かせた者もいない。そもそも陛下ほどの魔力があれば、魔族など手を振るだけで虫けらのように吹き飛ばされるのだ。
……しかし陛下は、心様にはそうしなかった」

「それは……あまりの怒りに我を忘れたのでは……」

「あの陛下が、我を忘れる?」

常に冷静で、激しい感情を見せることなく、悠然と玉座から魔界を見下ろす至高の王。

不愉快だと示すことは多々あったが、周囲が凍りつくかのような怒りを見せることはほとんどなかった。

だがそれは、心が絡むと一変する。

城から連れ去られた時も、今も、心だけが黎王の感情をひどく揺さぶる。

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