午前0時、夜空の下で
「やはり心様は、特別だ」

己に言い聞かすように、キシナは呟いた。

クウェンは小さく溜息を零す。

「……身代わりとなったココ様は、国事館で保護させていただきます。
ただし、私は黎王に無礼を働いた“ココロ”という女のことは一切知りません。
キシナ殿は我々を謀り城に侵入したココロを追って行った。
……これで、よろしいですね?」

「感謝する、クウェン殿」

頭を下げるキシナにクウェンは頷いて、琅に報告するためジェイを伴って国事館へと戻って行った。





キシナたちが密やかに話し合いを続ける中で、心はぼんやりと虚空を見つめていた。

誰も踏み込めない深い眠りの世界に逃げ込みたいと考えているのに、脳裏に過る妃月がそれを許さない。

「……どうして……」

――私のこと、忘れてしまったの?

恐れていたことが起こってしまったのだと、心は涙に濡れた顔を敷布に埋めた。
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