午前0時、夜空の下で
記憶が失われていたのは、心だけではなかったのだ。

必死に記憶を繋ぎ止めてきた心には皮肉なことに、妃月は心を何の感情もなく見据えた。

否、見知らぬ女が王の名を呼んだことに、冷酷な怒りすら感じていたかもしれない。

「妃月さま……」

――あなたに必要とされなくなった私が、魔界にいる必要はあるの……?

閉ざされた瞳から新たな涙が零れ落ちた瞬間、心の耳に小さなさえずりが届いた。

「……リーヴル、さま?」

目を開ければ、琅にいたはずの青い小鳥が首を傾げて佇んでいた。

可愛らしい姿に、心は思わず微笑む。

『……ダイジョウブ?』

突然頭の中に澄んだ声が響き渡り、心は息を呑んだ。

慌てて小さな室内を見渡すものの、心のほかには誰もいない。

『コッチ、コッチ』

さえずりとともに、小鳥が小さな羽を必死で動かしている。

小鳥のつぶらな瞳と目が合って、心は今度こそ目を丸くした。
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