午前0時、夜空の下で
死の世界で、忘却の彼方にあったかつての記憶が、走馬灯のように流れているのかもしれない。

思考に耽る心の耳に、再び男の声が飛び込んでくる。

「天族の姫を寄越すと言い出したかと思えば、翼を削ぎ落としてくるとはな。
……お前、大丈夫か?」

「お目汚ししてしまって申し訳ありません」

男の問い掛けに、十六夜は膝をついて謝ろうとしたようだった。

そんな彼女の行動に気づき、男が素早く彼女に歩み寄る。

男は膝をついた十六夜を見つめると、自身も同じように跪いた。

「俺には気を遣わなくていい。今日からお前は、俺だけのお姫様なんだろう」

驚いて顔を上げた十六夜に、男はからりと笑って手を差し伸べる。

「俺は黎稀。お前の隣に立つ男だ」

闇よりなお深い黒の髪に、鮮やかな血色の瞳。

神々しいほどの美貌で十六夜を魅了しながら、初代魔王は屈託なく笑った。
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