午前0時、夜空の下で
黎稀は十六夜のことが可愛くて仕方がないようだ。

守り、甘やかし、愛でて愛でて、慈しむ。

それはとても幸せで、温かな光景だった。

十六夜はあまり感情が面に出ない、おとなしい性質なので、黎稀に誤解を生んでしまっていたのだろう。

どこか不安定な十六夜に、黎稀はわかりやすい愛情表現をぶつけていた。



そんな、微笑ましくてもどかしい光景は、一人の男によって崩れ去る。

次期魔王候補である冷泉が現れたのだ。

そこからの光景は、目まぐるしく移り変わる。

「十六夜……お前は幸せな時を生きろ。俺は先に逝く」

死を悟った黎稀は、穏やかだった。

天王によって天力を封じられた十六夜は、治癒すらできぬ、ただの女だ。

――イヤ! 私を、置いて逝かないでっ……!!

血を吐くような懇願は、とうとう叶うことはなかった。
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