午前0時、夜空の下で
心はしばらく立ち往生していたものの、護衛に立つアルジェンから目で催促され、どうすることもできずに部屋を出た。

妃月の自室に着いた心は、目の前に立ちはだかる扉を控えめに叩く。

「……?」

入れ、という声が聞こえない。

いないのだろうかと首を傾げていると、軋んだ音を立てて重厚な扉が開いた。

「っ……!!」

中から腕が伸びてきたかと思うと、逆らいようのない力で引き寄せられる。

容赦なく寝室に連れ込まれると、寝台の上に押し倒された。

彼は愉しげに笑いながら、筋張った指で心の項を辿ってゆく。

執拗に撫でさするその動きはあまりにも艶めかしくて、白い肌は羞恥に赤く色づいていった。

「……ひ、妃月さま……?」

恐る恐る様子をうかがってみるものの、彼はただ喉の奥で笑うだけ。
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